社長と社員とでは、立場も違うため、同じものでも異なる見方をしており、権限も責任も持つ危機感なども異なってきます。
その立場の違いを完全に取り払うことはできないため、むしろ、その「違い」を知って整理しておくことに意味があるといえるかもしれません。
竹田陽一著「小さな会社★社長のルール ランチェスター経営成功への実践手法」(フォレスト出版) を参考として。
社長の仕事を社員の仕事にすると、軋轢が生まれる
- 全員が経営者
- 全員が「経営戦略」を考えるべき
- 業績にもっと責任を持つべき
社長が社員にこれらを言ったとしても、なかなか伝わることは難しいように思います。
社員は大事なことの決定権については持たされることもないなか、責任だけが重くされてしまっていることになってしまいます。
ただし、言いたくなる気持ちも分かります。
危機感を全員で共有したいという気持ちもあれば、経営者としての責任の重さを軽減したいという気持ちもあるかもしれません。
そんななかで、冒頭のようなことを言われると、”そうなったらいいな”と思いがちになります。しかし、実際には、社長と社員とでは立場が異なり、完全に共有することは難しいのです。
社長の役割、社員の役割をはっきりさせる
社員は、基本的に、会社の目標・戦略・仕組み・ルールに則って、それを達成するための戦術(どのようにするか)を考え、実行するということが、主な役割となります。
そこに、もし数十名規模の会社であれば、その戦術のリーダーが選任される程度です。
一方、社長は、会社の目標を定め、戦略(何をするか)を考え、仕組みを作り、社員教育を考えることが役割です。
数名規模の会社においては、社長が戦術のリーダーを兼ねることになります。
よほどの例外がない限り、社員は、「社長の役割」を代わって行うということはできません。
仮に、例外で、社員が行えるようになってしまうと、それはつまり、その社員が社長に取って代わってしまうことをも意味してしまいます。
上記の役割分担が明確になっていないと、会社が混乱・停滞してしまうことになってしまいます。
社長にとっての”自分ごと”、社員にとっての”自分ごと”
同じ”会社”でも、社長にとっての”会社”の捉え方と役割、社員にとっての”会社”の捉え方と役割は異なっています。
そのため、社長が持っている危機感をそのまま社員に共有して欲しいと思ったとしても、現実問題として不可能なのです。
では、どのようにすれば共有できるかを考えてみると、社長が、社員にとっての”会社”の捉え方と役割を理解し、その立ち位置に沿った説明をしていくことかと思います。
社員にとって”自分ごと”と感じられるメリット(キャッシュフローコーチという観点からは、給与や賞与)を理解し、共通言語として会社全体の流れ(キャッシュフローコーチという観点からは、会社のお金の流れのブロックパズル)を共有した上で、社員にとって”戦術面で”やって欲しいということまで落とし込んで語る、ということがひとつの解決策だと感じます。