会社の売上や利益を安定させるためには、”日々の経営判断”の誤りがないようにしたいところです。
松岡靖浩著「会社をつぶさない社長の選択」(かんき出版)を参考にして。
客単価を上げる?、客数を増やす?
売上を伸ばそうと考えたとき、真っ先に、「客数を増やそう」と考える方は多いですが、中小企業の場合にはリソースが限られていることから(飲食店で考えれば店舗スペースなど)、客数ではなく「客単価を上げる」を優先的に検討すべきと考えられます。
”客数を増やす”の落とし穴
客数を増やす戦略は、売上の増加に伴って「仕入原価」や接客のための「人件費」も同時に増えてしまうという避けられないウィークポイントがあります。
どれだけ客数が増えてもコストも連動して上がってしまいます。
結果、忙しくなる割には手元に利益が残りにくく、事業を継続していくことが難しくなるという状態に陥りがちになるのです。
”客単価を上げる”のメリット
客単価を上げる戦略は、現在のお客様数や対応の手間を変えずに、売上と利益の幅だけを大きくすることができます。
同じ売上目標を達成する場合でも、客単価が高い方が圧倒的に利益率も高く、経営を安定させやすくなります。
客単価を上げるための3つのアイデア
単純に客単価を上げることを考えると、既存のお客様の反応が気になったり、お客様へ説明できるだろうかと不安になったり、逆に売上総額が減ったりはしないか心配になりがちです。
以下の施策であれば、比較的、既存のお客様にも無理のない形で進めることができ、現実的と考えられます。
共通しているのは、”お客様への選択肢を広げること”であって、”それをどのような方向に広げるべきか”という話であるということです。
松竹梅形式
商品を「高・中・低」の3つの価格帯で用意します。
心理学的に、多くの消費者が「真ん中(中)」のグレードを選ぶ傾向があるとされており、実質的な客単価の向上を見込むことができます。
クロスセルとアップセル
- メイン商品に加え、関連商品も選べるようにする(クロスセル)
- 本来の希望よりもワンランク上の商品も選べるようにする(アップセル)
掛け算思考
「飲食店×コワーキングスペース」のように、既存のサービスに別の要素を掛け合わせ、時間の経過に応じた価値を明確に提示することにより、正当な課金の機会を作ります。
地域密着を突き詰めるか、全国展開を志向するか
「ランチェスター戦略」に基づけば、弱者が生き残るためには、全国展開ではなく、「地域密着(ドミナント戦略)」を突き詰めるべきとされます。
「全国展開」は、強者の戦略
全国展開は、莫大な広告宣伝費や大規模な物流ネットワークを持つ「強者(大企業)」の必勝戦略であると考えておくべきと考えられます。
十分な体力や認知度がないまま大都市や全国市場に進出してしまうと、強者の中に埋もれてしまい、結果的に撤退を余儀なくされるケースは珍しくありません。
「地域密着」で圧倒的なシェアを獲得する
これに対して地域密着は、限られた資金や人員を「特定の狭いエリア」に集中投下する戦略です。
エリアを絞ることにより、地域特性や顧客への深い理解に基づく営業効率、あるいは配送効率なども劇的に上がり、その地域内での「圧倒的なシェア(認知度)」を獲得することが可能になります。
いきなり広い市場を狙うのではなく、まずは特定の地域で”このサービスならあの会社”といわれるトップの座を確立し、そこから少しずつ隣接エリアへ拡大していくことで、”○市ならあの会社→○県ならあの会社”というような、手堅いアプローチが重要です。
リピート商品に力を入れるべきか、トレンド商品に力を入れるべきか
売上を長期的に安定させるには、一過性の「トレンド商品」を追いかけるよりも、長く定番となる「リピート商品」を優先して力を入れるべきと考えられます。
「トレンド商品」はブーム終了リスクが大きすぎる
トレンド商品は、時流に乗れば爆発的な売上を生み出す魅力があり、売る側の達成感ドーパミンも相当なものと考えられます。
しかしながら、熱狂的なブームは必ず去るものであって、ブームが過ぎ去った後には大量の在庫リスクや急激な売上減少という大きな危険が伴います。
常に新しいヒットを生み出し続けなければならず、経営は非常に不安定なものになります。
「リピート商品」は流行に左右されない強固な土台
一方で、リピート商品は、爆発力こそないものの、流行に左右されない「変わらない強さ」を持っています。
流行り廃りのないベーシックなデザインの衣料品や、日々の生活に欠かせない消耗品のように、時代が変わってもファンが何度も買い続けてくれる商品であり、会社の売上の強固な土台となります。
例えば、車のカラーが挙げられます。
中古車市場では「白」や「黒」といった定番カラーの車が常に安定した人気を保ち、高値で取引されます。
一方で、過去に話題を集めたトヨタの「ピンクのクラウン」のような奇抜なカラーは、発売当初こそ珍しさから大きなトレンドになりよく売れたそうですが、時間が経つと好き嫌いがはっきりと分かれ、結果、長く売れ続ける定番にはなりませんでした。
目先の大きな利益を目指すよりも、「数年後も買ってもらえる定番は何か」を考え、それを育てることに注力したほうが圧倒的によいと考えられます。
「高利益率・高単価」か、「薄利多売」か
商品をどのように売るか。中小企業は、薄利多売を避け、「高利益率・高単価」のビジネスを選ぶべきと考えられます。
「薄利多売」は見えない労働コストが膨大
薄利多売は、一見、商品を安く設定することでどんどん売れていくように思えます。
実際のところ、「巨大な資本力」を持つ企業にしか事業成立しない過酷なモデルともいえます。
利益が薄いため、とにかく大量の取引をこなさなければならず、商品の陳列・梱包・発送・顧客対応といった”見えない労働コスト”も跳ね上がります。
仕入れの先行投資もかさみ、十分な資金力がないと知らないうちに自転車操業状態になってしまうのです。
「高利益率・高単価」で確実に利益を残す
高利益率・高単価のビジネスは、取引の数が少なくとも、持続可能に(無理なく)利益を残していくことができます。
また、一人ひとりのお客様に丁寧なサービスを提供できます。結果、顧客満足度も上がりやすく、労働環境の改善にもつながります。
もし薄利多売の手法を取り入れるとしたら、「お試し価格」「無料サンプル」「期間限定」のように、本当に売りたい高単価な本命商品を買ってもらうための”入口(集客の導線)”として割り切って利用する思考を持ちたいところです。
