会社の資金繰りがよくない時、経営者は「誰に何を優先して支払うべきか」という苦渋の決断を迫られますが、そのとき良かれと思った判断が実は会社をさらに追い詰める禁じ手になっているケースも少なくありません。
松岡靖浩著「会社をつぶさない社長の選択」(かんき出版)を参考にして。
「借入金を一括で繰上返済する」vs「借入金を残しておく」
会社の資金に少し余裕がある時や、今後の不安から「今のうちに借金を減らしておこう」と、定期預金などを解約して一括返済しようとするケースがあります。
一見、健全な経営に見えますが、事業において、「借入金の一括返済」は禁じ手に近い行為といえます。。
- なぜ一括返済はNGなのか?
銀行は、あらかじめ設定された返済期間で利息を受け取ることで利益を出しています。
一括返済は、この取引相手である銀行側の売上を一方的に消し去る行為となってしまいます。 - 今後の融資に悪影響
一括返済をして預金を減らした後に業績が悪化し、”また貸してほしい”とお願いしても、銀行からの印象が悪くなっていることから融資を断られるリスクもあります。
「税金を支払う」vs「家賃を支払う」
資金繰りが厳しくなり、税金か事務所家賃、どちらかしか払えない状況に陥ったとした場合、多くの方は”事務所を追い出されたら仕事ができない!”と家賃を優先しがちですが、これも多くの場合、間違いです。
- 税金滞納の恐ろしさ
税金を滞納すると、銀行からの新規融資は確実に断られることとなり、資金調達の道が完全に絶たれることになります。 - 家賃は「敷金」で相殺できる可能性がある
事業用物件を借りる際、多くの場合数ヶ月分(大抵は6ヶ月分程度)の「敷金(保証金)」を支払っています。
貸主に事情を相談し、「敷金から家賃を相殺してもらえないか」と交渉してみることで、数ヶ月の滞納であれば応じてくれる大家さんは意外と多いものです。
「税金を分納する」vs「税金を滞納する」
資金をかき集めても税金が払えないほどである場合、そのまま放置(滞納)するか、税務署に相談して分割払い(分納)にするかの選択になります。
納税証明書上はどちらも「未納」となってしまいますが、その後の展開には天と地ほどの差があります。
- 税務署と話し合いをしているかが鍵
税金が払えない時には、「換価の猶予」という制度を申請できます。
これは、無理に納税すると事業継続や生活が困難になる場合に、「月〇万円ずつ支払います」という計画書を提出するものです。 - 放置(無視)は最悪の選択
計画通りに支払えなくなった場合でも、無視せずすぐに税務署へ連絡し、誠意を見せることが重要です。
連絡を無視し続けると、容赦なく資産が差し押さえられることになります。
「税金を支払う」vs「借入金を返済する」
税金と銀行への借入金返済の優先順位について。
「銀行にきちんと返済していれば、また貸してもらえるはず」と信じ込み、税金を滞納してまで銀行返済を優先する選択。これは大きな誤解です。
- 公的機関は税金滞納者に融資しない
一般的な融資(日本政策金融公庫、信用保証協会を通した銀行融資)の運営には、国民の税金が投入されています。
そのため、国のルールを守らない税金滞納者には融資が行われません。 - 正しい立て直し方
まずは銀行に「条件変更(リスケジュール:元本返済の猶予など)」を依頼し、毎月の返済額を一時的に減らしてもらいます。
浮いた資金(原資)を税金の支払いに充て、一刻も早く滞納をゼロにすることが最優先です。
まとめ
資金繰りが悪化した際は、パニックにならずに正しい優先順位をつけることが事業を継続していくための第一歩です。
- 手元資金はとにかく残す(=一括繰上返済しない)
- 家賃や銀行返済よりも、何よりも”税金滞納”を避ける
- どうしても払えない税金は、税務署にすぐ相談し、分納する
苦しい時こそ各関係先(銀行、貸主、税務署)へ誠実なコミュニケーションを図ることが、経営危機を乗り越える鍵となります。
