安定した会社経営には、目先の利益だけでなく、長期的視点での”経営判断”が不可欠です。
松岡靖浩著「会社をつぶさない社長の選択」(かんき出版)を参考にして。
集客戦略の選択:「プッシュ型」か「プル型」か
営業戦略には、大きく分けて「プッシュ型」と「プル型」の2つのスタイルがあります。
プッシュ型営業
企業側から見込み客へ直接的に積極的にアプローチをかける手法です。
見込み客がいる場所へ的確にアプローチできればすぐに成果が出やすい反面、常にお客様を追いかける営業スタイルになるため、相手優位の価格交渉になりやすいという弱点があります。
プル型営業
魅力的な情報や価値を提供し、見込み客の方から自社へ引き寄せる(問い合わせてもらう)手法です。
顧客が集まる仕組みができるまでは時間がかかりますが、一度仕組みが完成すれば、継続して成果を上げることができます。
営業戦略の比較
| 比較項目 | プッシュ型営業 | プル型営業 |
|---|---|---|
| アプローチ | 自社から顧客へ直接働きかける | 顧客を自社に引き寄せる |
| 成果が出るまでの時間 | 比較的早い(瞬間的) | 時間がかかる(長期戦) |
| 力関係・価格交渉 | 顧客優位になりやすい | 自社優位で進めやすい |
| 長期的な安定性 | 常に新規開拓の労力が必要 | 顧客がファン化しやすく、継続収入に繋がる |
会社を安定して成長させるためには、コツコツと見込み客を惹きつけてファン化し、継続的な収入と適正な価格交渉が可能になる「プル型」のビジネスモデルを目指すことが鍵になってきます。
取引先との力関係を決める「シェア」について
取引先(BtoB)との関係性について。
「発注する側」と「受注する側」では、常に発注側が強いと思われがちですが、実際は、そうではないのです。
力関係は、「シェア」によって逆転する
ある会社の社長は、発注者から強気の値下げ要求を受けて悩んでいました。
しかし、実際には、その発注者の仕事の「6割」をその会社が担っていました。
これほどのシェアを占めていれば、もしもその会社が”その価格なら仕事を一切受けない”と撤退すれば、発注者の業務は回らなくなり倒産してしまいます。
下請け側であっても値下げを拒否し、対等以上の交渉が可能になるのです。
これは、Amazonと、ヤマト運輸の関係などにも当てはまります。
たとえAmazonが世界的大企業であっても、その物流の大部分を特定の配送会社に依存していれば、配送会社からの運賃値上げ要求をむげに断ることはできないのです。
物流が止まれば、ビジネスそのものがストップしてしまうからです。
このように、ビジネスの力関係は、単なる「会社の規模」ではなく、「相手の事業において、自社がどれだけのシェア(依存度)を占めているか」で決まるということです。
「限界生産者」からの脱却、最適なシェア率
経営コンサルタントの一倉定氏は、自社の取引先におけるシェア率が10%以下の場合は”限界生産者”と整理しています。
”限界生産者”とは、相手企業が不況に陥ったり経費削減に乗り出したりしたときに、真っ先に取引を切られるリスクが高い状態を指します。
安定した経営を目指すためには、この限界生産者の状態から脱却し、相手にとって「簡単に切ることのできない存在」になる必要があります。
「35%程度のシェア」を獲得できれば、不況時でも簡単には切られない強固な基盤になるといわれています。
立場に応じたシェア率のコントロール
力関係を有利に保ち、リスクを減らすためには、発注側と受注側の双方の視点でシェア率を意識し、適切にコントロールすることが重要です。
受注側(下請け)の戦略
取引先内での自社シェア率を高め、「自社を使わざるを得ない不可欠な存在」になることを目指します。
そのためには、与えられた仕事をこなすだけでなく、他社にはない専門性を磨いたり、圧倒的なスピードで対応したりと、相手にとっての「利便性」と「信頼」を地道に積み重ね、徐々に任される仕事の割合を増やしていく必要があります。
発注側(元請け)の戦略
逆に、発注側は、一つの外注先に依存しすぎることのリスクを認識すべきということになります。
もしその下請け会社が倒産したり、突然大幅な値上げを要求してきたりした場合、自社のビジネスが立ち行かなくなるからです。
常に複数の会社に業務を分散して発注し、特定の企業へのシェア(依存度)を一定以下に抑えるリスク管理が求められます。
