ChatGPTやClaudeやGeminiに経営の悩みを相談してみたものの、返ってきたのは当たり障りのない一般論だったので、「AIはこんなものか」と感じてそれきり使わなくなってしまった方も少なくないかもしれません。AIの答えが浅いとき、原因の多くはAIの性能ではなく、こちらの”聞き方”にあります。
聞き方を少し変えるだけで、AIは月数千円で雇える優秀な経営参謀に化けます。
深津貴之・けんすう(古川健介) ・尾原和啓著「メタスキル」(NewsPicksパブリッシング)を読んで。

なぜAIの答えは浅くなってしまうのか
うまくいかない質問には共通のパターンがあります。
ざっくり聞いてしまう
たとえば「売上を伸ばす方法を教えて」と聞いたとします。
すると、新規開拓・リピート強化・単価アップといった、教科書どおりの答えが返ってきます。
間違ってはいません。
ただ、あなたの会社の事情を何も知らない相手からの答えなので、どうしても誰にでも当てはまる一般論になってしまいます。
考えてみれば当然で、初対面の優秀な人に「売上を伸ばすには?」とだけ聞いたとしても、深い提案は出てきません。AIもそれと同じです。
検索の代わりに使ってしまう
もうひとつは、調べものの延長でAIを使うパターン。
「インボイス制度とは」「法人化のメリットは」といった使い方ですね。
悪くないものの、それだけではAIの本領は発揮されません。
検索で済む質問は検索してきた回答のままで対応されてしまうからです。
AIの真価は、「あなたの状況を踏まえて、一緒に考えてくれる」(推論してくれる)ところにあります。
答えが深くなる聞き方の型
では、どう聞けばよいのか。
自分の状況を先に開示する
質問の前に「前提」を渡すことであると考えられます。
事業の内容、お客様の層、使える資金や人手の制約、自分が今どう考えているか。
こうした、できるだけ5W1Hに即した詳細かつ具体的情報を先に伝えてから質問すると、答えの具体性が一気に変わります。
たとえば、先ほどの売上の相談の場合、「前提:建設業で従業員5名。売上は安定しているが利益率が低い。値上げ交渉が苦手。 聞きたいこと:値上げ以外で利益率を改善する打ち手を、優先順位つきで知りたい。」といった聞き方です。
人間相手なら、ここまで細かく書くのは気が引けるかもしれませんが、相手はAIなので、長文を渡しても嫌な顔ひとつせずに、書いた分だけ答えは深くなります。
どんな視点で答えてほしいかを指定する
次に、視点の指定などもしてみます。
「資金繰りの専門家として」「あえて反対の立場から」「失敗するとしたらどんなケースか」といった形で、答えてほしい角度を伝えてみる。
同じ質問でも、視点を変えれば答えは何通りも出てきます。
ひとつの悩みを複数の角度から眺めることで、自分では気づかなかった選択肢が見えてきます。

一往復で終わらせない
ここまでの型で答えの質はかなり上がるものの、差がつくのはここからと考えられます。
しつこく聞き返す人が一番得をする
多くの方は、AIに1回質問して、返ってきた答えを読んで終わりにしています。
ただ、AIとの対話に関しては特に、返ってきた言葉に、「それはどういう意味?」「具体的には?」「別の案はない?」と問い返してこそ深まっていきます。
人間の専門家相手なら、何十回も質問攻めにするのは申し訳なく感じるものですが、AIなら、深夜でも休日でも、何度聞いても気兼ねは不要ですし、自分が納得するまで、遠慮なくしつこく聞くことができます。
これこそが、AIを相談相手にする最大のメリットといえるかもしれません。
あえて「反対意見」を出させてみる
しつこく聞く技のなかでも、特におすすめしたい使い方として、「自分の考えに対し、あえて否定的な質問をぶつけさせる方法」があります。
「この計画に対し、厳しい人ならどんな反論をしてくるか、10個挙げてください」と頼んでみます。
これは資金調達の場面でも効果を発揮します。
例えば、銀行融資の面談前に、事業計画への想定反論をAIに出させてひとつずつ自分の答えを準備しておく、いわば面談の予行演習をすることができます。
返済原資はどこから出るのか、売上計画の根拠は何か。
厳しい質問に先回りして備えた経営者と、ぶっつけ本番の経営者とでは、面談での説得力がまるで違ってくることになります。
数字の裏づけに不安があれば、顧問税理士など人と一緒に反論への答えを点検しておくと、さらに盤石になるということにもなります。
質問力は経営力
AIの答えは、人からの「質問」によって決まる、といって過言ではありません。
状況や前提を具体的に開示する。
視点を指定する。
一往復で終わらせずに掘り下げて聞く。
この3つを意識するだけで、AIは”検索の代わり”から、”24時間付き合ってくれる経営参謀”へと変わるのです。
なおかつ、この聞き方というのは、人間の専門家への相談でもそのまま役に立つものです。
「良い答えを引き出す力」は、これからの経営者にとってそれ自体がひとつの「経営力」であると言えます。
