同じ商品を、同じ値段で売っているのに、ある相手にはすんなり通り、別の相手には渋られる。
違っているのは、その代金が「誰の財布」から出ているか、という一点だけだったりします。
値段が通るかどうかは、商品の良し悪しだけで決まるわけではなく、買う人が、そのお金を「自分の痛み」として感じているかどうかに、大きく左右されます。
事業家bot著「金儲けのレシピ」(実業之日本社)を参考にして。
ビジネスモデルあれこれ
- 集客より関係性、LTVが商売の土台
- 消費者から購入する
- セルフサービス
- スケールメリット、スモールメリット
- 「1対多」
- 両面に課金する
- 砂糖を売る
- 確率を設計する
- 雰囲気を売る
- 意思決定を支援する
- 仕入れを工夫する
- 贈答品を売る
- 高くて良いもの
- 権威になる
- コアファン共鳴型
- 仕組みそのものを売る
同じモノでも、値段の通りやすさは「誰の財布から出るか」で変わる
人が「お金を払うとき」にどう振る舞うか。
自腹のときと、そうでないときで、人は別人になる
人は、自分の財布から出すお金には敏感です。
千円高いか安いか、本当に必要か、ほかにもっと安い選択肢はないか。
無意識のうちに、何度もそろばんを弾いています。
ところが、その代金を自分以外の誰かが負担してくれる場面になると、同じ人でも振る舞いが変わります。
普段なら選ばない少し高い品を、ためらわずに選ぶ。
”せっかくだから”と、いつもより一段上のものに手が伸びる。
これは特別な人の特別な心理ではなく、誰の中にもある自然な反応です。
「痛みの薄さ」が、価格を通す
ここで鍵になるのが、支払いに伴う「痛み」の大きさです。
自分の財布から出すお金は、痛みが強い。
だから慎重になり、価格に厳しくなります。
一方、誰かが代わりに払ってくれるお金は、痛みが薄い。
痛みが薄いほど、価格への抵抗はやわらぎます。
経済の言葉でいえば、価格弾力性(値段の変化に対して、買う量がどれだけ敏感に動くか)が下がる、という現象です。
平たく言えば、高くても気にされにくくなる、ということです。
接待で使われる店。
贈り物として選ばれる品。
福利厚生で利用されるサービス。
これらに共通しているのは、「受け取って喜ぶ人」と「実際に財布を開く人」が、別々だという構造です。
これがずれているとき、価格が通りやすくなります。
受益者と支払者は、いつもずれている
この構造、特殊な業界の話ではありません。
子どものために親が払う習い事、社員のために会社が払う研修、取引先のために自社が用意する手土産。
買って使う人と、お金を出す人が一致しない場面は、思っているよりずっと多いものです。
そして、その「ずれ」が大きい商品ほど、値段が前に出にくくなるのです。

あなたの売上は、お客様の「どの財布」から出ているか
売上を「支払いの出どころ」で分解する
自社の売上を、金額や商品別ではなく、「お客様のどの財布から出ているか」という軸で分けてみると、例えば、こんな分け方ができます。
- お客様自身が自腹で払うお金
- 会社の経費として落とされるお金
- 福利厚生として会社が負担するお金
- 贈り物の予算として用意されるお金
- 借入を原資にして支払われるお金
- 補助金や助成金が出どころになっているお金
同じ売上に見えても、出どころが違えば、お客様の価格への感じ方がまったく異なります。
自腹の売上は、値段に最も厳しく見られます。
逆に、経費や贈答、補助金が出どころの売上は、価格への抵抗がやわらぎやすい傾向があります。
出どころが変われば、打ち手が変わる
出どころの痛みが薄い商品であれば、価格よりも「品質」や「安心感」「特別感」で選ばれている可能性が高いということになります。
逆に、そういう商品で価格だけを下げても、実はあまり喜ばれず、かえって価値を下げてしまうこともあります。
つまり、売上の出どころが見えると、「どこで値上げの余地があり、どこで価格競争を避けるべきか」の地図が描けるようになります。
値付けが、勘や横並びで決めるものではなく、出どころから逆算して設計できるもの、に変わるのです。
補助金という、特殊な財布
注意して見たいのは、補助金や助成金が出どころになっている売上です。
これは「受け取る人以外が払う」構造の典型で、価格が通りやすい反面、制度に依存した売上でもあります。
制度が縮小したり終了したりすれば、その売上はそのまま消えかねません。
通りやすさの裏には、もろさが隠れている。

「どのお金で買われるか」を意識した値づけと商品設計
痛みの薄い財布に合わせて、商品を仕立てる
同じ商品でも、見せ方や用途を少し変えるだけで、出どころの違う財布に届けられることがあります。
例えば、普段使いの商品を、贈答用にていねいに仕立て直す。個人向けに売っていたサービスを、福利厚生として法人に提案する。
中身が同じでも、「誰のどの財布から出るか」が変われば、適正な価格帯が変わります。
これは、「お客様の支払いの文脈に商品を合わせる」という発想です。
他人の財布に寄りかかる売上はもろい
痛みの薄い財布を狙う発想は強力ですが、そこに寄りかかりすぎると、足元が不安定になります。
例えば、補助金頼みの売上は、制度が変われば揺らぎます。取引先の経費で成り立っている売上は、相手のコスト削減方針ひとつで細ります。
お客様の借入を前提にした売上は、金利や融資環境が変わると鈍ります。
通りやすい財布は、自社でコントロールできない要因に左右されやすい、という弱点を抱えています。
だからこそ、「通りやすさ」と「安定性」は分けて見る必要があります。
通りやすい売上ばかりに偏らず、自腹で選ばれる強さ、つまり商品そのものの価値で勝てる部分も、並行して育てておくことも大切だと考えられます。
自社の値付けを見直す、最初の一歩
まずは、自社の主力商品をいくつか思い浮かべて、それぞれが「お客様のどの財布から払われているか」を書き出してみます。
それだけで、価格への向き合い方が変わってきます。
このとき、税制や補助金制度にかかわる数字は、年度や要件で変わることがあります。
自社の売上を「誰のお金で買われているか」という目で見直すことは、値づけの精度を上げるだけでなく、自社の強さともろさを同時に映し出してくれます。
その地図を一度描いておくことは、これからの値づけと商品設計の確かな足場になると思われます。
