同じように汗をかいて働いても、手元に利益が残る商売と、忙しいのにお金が残らない商売がある。
その分かれ目の一つが、扱っている商品が「形のあるもの」なのか「形のないもの」なのか、という性質の違いにあります。
商品を4つのタイプに分けて整理しながら、なぜそういう関係が生まれるのかを考えてみます。
事業家bot著「金儲けのレシピ」(実業之日本社)を参考にして。
ビジネスモデルあれこれ
- 集客より関係性、LTVが商売の土台
- 消費者から購入する
- セルフサービス
- スケールメリット、スモールメリット
- 「1対多」
- 両面に課金する
- 砂糖を売る
- 確率を設計する
- 雰囲気を売る
- 意思決定を支援する
- 仕入れを工夫する
- 贈答品を売る
- 高くて良いもの
- 権威になる
- コアファン共鳴型
- 仕組みそのものを売る
商品には「形のあるもの」と「ないもの」がある
利益率の差がどこから生まれるのかを、商品の性質から見ていきます。
同じ100万円を売り上げても、90万円が原価で消える商売と、20万円しか原価がかからない商売では、残るお金がまったく違ってきます。
形のあるものと、形のないもの
商品は大きく、「形のあるもの」と「形のないもの」に分けられます。
「形のあるもの」とは、仕入れて売る品物や、材料から作る製品など、目に見えて手に取れる商材です。
小売店の商品、飲食店の料理、工場で作る部品などがこれにあたります。
「形のないもの」とは、人の知識や技術、時間そのものを提供する商材です。
コンサルティング、各種のコーチング、保険や金融商品、デザインや設計といった専門サービスがこれにあたります。
なぜ性質の違いが利益率を分けるのか
形のあるものは、売るたびに仕入れや材料が必要になります。
100個売れば100個分の原価がかかる。
形のないものは、一度持っている知識や技術を、何度提供しても追加の原価がほとんど増えません。
ここに、利益率が構造的に変わってくる最初の理由があります。
形のないものを扱う商売は、この原価率が低く出やすいため、同じ売上でも利益として残る部分が厚くなります。

なぜ形のないものは利益が残りやすいのか
売れば売るほど利益率が上がる構造
形のないものを扱う商売には、ある一線を越えると利益が一気に増える、という特徴があります。
たとえば、場所を借りて人を集めるタイプの商売を考えてみます。
会場の家賃や人件費は、お客さんが何人来ても大きくは変わりません。
これらは「固定費」と呼ばれ、売上に関係なく毎月かかる費用です。
最初のうちは、入ってくるお金でこの固定費を埋めるだけで精一杯です。
ところが、固定費を回収しきる一線を越えた後は、追加で入ってくる売上のほとんどがそのまま利益になります。
仕入れが増えるわけではないからです。
この”一線”のことを損益分岐点と呼びます。
形のないものを扱う商売は、この損益分岐点を越えた先の利益の伸びが、形のあるものより急になりやすいというわけです。
1人のお客さんから生まれる金額も大きくなりやすい
もう1つの特徴は、1人のお客さんが生涯にわたって払ってくれる金額が大きくなりやすい点です。
例えば、継続して契約が続くサービスや、成果に応じて報酬が決まるサービスは、一度きりの売り切りではなく、関係が続く限り取引が積み重なっていきます。
1人のお客さんが取引期間全体で払ってくれる金額の合計を、「LTV(顧客生涯価値)」と呼びます。
形のないものは、この顧客生涯価値が大きくなりやすい商材が多いです。
ただし、利益が残りやすいという話は、あくまで「売れたら」という条件つきです。
その肝心の「売れたら」が、形のないものでは難しいものです。
儲かる商品ほど、売るのが難しい
利益が残りやすいなら、誰もが形のないものを売ればよさそうに思えます。
ところが現実はそう単純ではありません。
利益率の高さと、売りやすさは、たいてい裏表の関係にあるからです。
利益率と販売難易度のトレードオフ
形のないものは、目に見えません。
お客さんは、買う前に中身を確かめることができません。
料理なら見た目や香りで価値が伝わりますが、コンサルティングや設計の価値は、契約して取り組みが進むまで実感しにくいものです。
この「価値が見えにくい」という性質が、そのまま売りにくさにつながります。
つまり、利益率が高い商材ほど、その良さを相手に伝えて納得してもらう難易度が高い。
これが、儲かる商品ほど売るのが難しい、という逆説の正体です。
商材を4つに分けて考える
この関係を整理するために、商品を2つの軸で4つに分けてみます。
- 形のあるものか、形のないものか
- 価格が高いか、安いか
この2軸を掛け合わせると、商材は4つのタイプに分かれます。
- 形があって安いもの
- 形があって高いもの
- 形がなくて安いもの
- 形がなくて高いもの
この4つのうち、最も利益率が高くなりやすいのが「形がなくて高いもの」なのです。
原価がかかりにくいうえに、単価も高いからです。
ところが同時に、この象限は最も売るのが難しい。
形がないものを、しかも高い価格で納得してもらう必要があるからです。
逆に「形があって安いもの」は、誰でも価値が分かるので売りやすいかわりに、利益率は薄くなります。
自社の主力商品がどの象限にあるかを置いてみる。
もし「形があって安いもの」に偏っているなら、忙しさのわりに利益が薄い構造に陥りやすい。
そこに気づくことが、商売の組み立てを見直す出発点になります。

形のない価値を相手に見せる3つの工夫
「形がなくて高いもの」を、どうやって売っていけばよいのか。
ポイントは、目に見えない価値を、相手の頭の中で見えるかたちに翻訳することにあるといえそうです
その”翻訳”の代表的な3つの工夫について考えてみます。
束ねて、商品らしくする
形のないサービスは、そのままだと輪郭がぼやけていて、なかなか伝わりません。
そこで、提供する内容をいくつかの「段階」や「項目」に束ねて、名前をつけて商品の形にします。
例えば、ばらばらに見える内容を「初回の現状整理」「毎月の打ち合わせ」「年間の振り返り」といった構成に整理します。
こうすると、相手は「何を受け取ることができるのか」を具体的に思い描けるようになります。
形のないものに、輪郭を与えます。
買った後の変化を想像してもらう
人がお金を払うのは、商品そのものではなく、「それを手に入れた後の変化」に対してであるといえます。
なので、買った後にどんな状態になれるのかを、相手が自分のこととして想像できるように伝えるようにします。
漠然と「役に立ちます!」ではなく、その人の状況に即し、超カスタマイズして、半年後や一年後にどう変わっているかを相手に寄り添い、一緒になって思い描く。
未来の景色が鮮明になるほど、価格への納得は深まります。
課題の解決策として差し出す
同じサービスでも、「これを買いませんか」と差し出すのと、「あなたのそのお困りごとを解決することができます」と差し出すのとでは、受け取られ方がまるで違います。
相手がいま抱えている具体的な課題を、相手の状況を丹念に共感して正確にヒアリングし、一緒になって言語化し、その解決策としてサービスを位置づける。
これにより、サービスは売り込みではなく、課題解決策に変わります。
提供内容を束ねて項目に分け、それぞれが相手のどの課題に効くのかを言葉にする。
それだけでも、価値の伝わり方が変わることになります。
「価値を翻訳できているかどうか」は、見積書一枚にとっても表れるものです。
自社に応用して考えてみる
これは形のないものを専門に売る商売だけのものではないといえます。
形のあるものを扱う多くの会社にも、応用できる考え方が含まれています。
形のある商品に、形のない価値を足す
もし自社が、形があって価値の分かりやすい商品を扱っているなら、おのずと利益率がどうしても薄くなりがちです。
その商品に”形のない価値”を上乗せできないかを考えてみます。
品物そのものに、選び方の相談や、使いこなしの提案、買った後の安心といった目に見えないものを添えてみる。
品物は同じでも、そこに「知識や体験」という形のない価値が乗ると、価格に「意味」が生まれ、利益率を引き上げる余地が出てきます。
原価で勝負するのではなく、意味で価値を足していく発想です。
形のないものを扱うなら、価値を翻訳しきる
逆に、もともと形のないサービスを扱っているなら、利益率の高さは構造として味方についています。
問題は、”その価値をきちんと相手に翻訳できているかどうか”であるといえます。
価値が伝わっていないだけで、本来受け取れるはずの対価を取りこぼしているかもしれません。
利益率の高さは、引き受けた責任の対価でもある
形のないものが高く売れるのは、原価をかけずに高く売りつけているからではありません。
形のないサービスは、相手の不安や課題を引き受け、専門の知識と責任をもって応えるものです。
利益率の高さは、その責任と専門性を引き受けた対価だと考えるのが、健全な見方です。
だからこそ、価値に誠実に値段をつけ、その価値をきちんと伝えきり、かつ、専門性をもって責任を引き受けることが重要になります。
自社の商品がいまどのステージにあるのかを俯瞰してみたうえで、形のない価値をどう足して、どう翻訳するかを考えること。
その小さな見直しが、確かな利益へと変えていく一歩になるといえます。

