世界でいちばん長く、いちばん安定して売れ続けているもの。塩、酒、たばこ。
派手な最新技術でも、流行の商品でもありません。
人が何百年も手放さずに、お金を払い続けてきたものですが、そこには、商売の利益を大きく左右する一つの構造が隠れています。
事業家bot著「金儲けのレシピ」(実業之日本社)を参考にして。
ビジネスモデルあれこれ
- 集客より関係性、LTVが商売の土台
- 消費者から購入する
- セルフサービス
- スケールメリット、スモールメリット
- 「1対多」
- 両面に課金する
- 砂糖を売る
- 確率を設計する
- 雰囲気を売る
- 意思決定を支援する
- 仕入れを工夫する
- 贈答品を売る
- 高くて良いもの
- 権威になる
- コアファン共鳴型
- 仕組みそのものを売る
国が手放さないものほど、儲かる
まずは、”なぜそれが儲かるのか”を、国家の振る舞いから読み解いてみます。
塩、酒、たばこなど。いずれも、かつて国が専売で囲い込んだり、今も重い税を課していたりします。
国が独占したがってきたもの
塩は、長いあいだ国の管理下に置かれてきました。
たばこも酒も、専売や特別な税の対象です。
なぜ国は、わざわざこれらを握りたがるのか。
理由はシンプルで、確実に、繰り返し売れるからです。
人が手放せないものは、景気が良かろうが悪かろうが、一定量が必ず消費されます。
国にとっては、安定した税収の源泉になる。
裏を返せば、国がそこまでして握りたがるものは、それだけ儲かる商売だということです。
重い税がかかっても、売れてしまう
たばこや酒には、価格のかなりの部分を税が占めるものもあります。
普通の商品なら、これだけ上乗せされれば客は離れます。
ところが、これらは値段が上がっても、手放せない人が買い続けます。
ここに、商売の一つの真実があります。
人が理屈ではなく、習慣や本能で求めるものは、価格への抵抗が驚くほど小さいということ。
つまり、「値上げしても離れない客がいる商品を持っているかどうか」が、利益体質を大きく分ける、という点です。

原価の安さは、弱さではなく設計
もっと身近な飲食店に視点を移します。
街中で繰り返しブームになる嗜好品の多くは、共通して、ある3つの素材でできています。
砂糖、小麦粉、脂肪です。
「白い粉」三点セットの正体
クレープ、タピオカドリンク、パンケーキ。
行列ができるこれらの商品を分解すると、芯にあるのはほぼ、「砂糖と小麦粉と脂肪」です。
砂糖や塩や小麦粉といった素材は、原価が極めて安い。
原価率で見れば、かなり低く抑えられます。
1杯数百円で売られていても、中身の素材そのものの値段はほんのわずかということも珍しくありません。
安く作れることは、ズルではない
原価の安さは、悪いことなのではなく「設計」なのです。
素材が安いからこそ、店構えやサービス、ブランドづくりにお金と手間をかける余地が生まれます。
そして残った粗利が、店を続けるための体力になります。
例えば、砂糖が人を惹きつける力は、歴史が証明しています。
かつて砂糖は貴重な舶来品で、海の向こうから運ばれてくる玄関口を通って各地へ広がり、やがてカステラのような銘菓を生みました。
人類は、甘さのためなら遠い航路もいとわなかった。
それほどまでに、これらの素材は人の心をつかむ力を持っているのです。

「体によさそう」「映える」が、値段をつくる
安い素材が高く売れる。
その差額は、いったいどこから生まれているのか。
答えは、素材そのものではなく、”まとわせる文脈”にあります。
人は、言い訳を求めている
甘いものや脂っこいものを食べたい。
これは人間の本能ですが、同時に、多くの人は少しだけ後ろめたさを感じています。
そのため、人は、買うための言い訳を探します。
タピオカなら「植物由来っぽくて体に優しそう」、スムージーなら「野菜が摂れる」、少し高い焼き菓子なら「自分へのご褒美」。
こうした言い訳は、決して嘘というわけでもありません。
売り手がこの言い訳をうまく用意してあげることで、お客様は手に取ることになります。
同じ素材でも、文脈で値段が変わる
健康的な響き、おしゃれな内装、きれいな写真の言葉。
これらをまとわせるだけで、同じ砂糖と小麦粉が、何倍もの値段で売れていきます。
多くの経営では「原価にいくら乗せるか」で値段を決めますが、本当に強い商売は、「お客様がどんな価値を感じるか」で値段を決めています。
もう一度欲しくなる、を仕組みにする
文脈で一度高く売れたとして、それが一回きりでは商売は安定しません。
利益を生み続ける店は、客が自然ともう一度来たくなる仕組みを持っています。
そして、その仕組みの核にあるのは、やはり”本能”なのです。
本能は、繰り返しを呼ぶ
甘い、しょっぱい、脂っこい。
これらを心地よいと感じるのは、人間に組み込まれた本能です。
理屈で「もう食べない」と決めても、舌と脳が覚えていて、また欲しくなる。
だからこそ、これらの素材を使った商品は、一度きりで終わらず、再訪が起きやすいのです。
ある一部の寿司屋は、酢飯にしっかり砂糖を効かせている店が少なくありません。
客は”ネタが新鮮で美味しかった”と記憶しますが、再訪を後押ししている隠れた立役者は、実はシャリに溶け込んだ甘さだったりします。
本能に、そっと効かせている。
派手な仕掛けではなく、こうした静かな設計こそが、繰り返し選ばれる店を作ることもまた現実です。
自分の商売は、本能のどこに効いているか
自社を、3つの軸で点検する
自社の商品やサービスを、3つの軸で並べ直してみます。
1つ目は、原価率の軸です。
素材や仕入れが安く、文脈で価値を足す余地があるものはどれか。
2つ目は、リピートの軸です。
一度きりで終わらず、客が自然ともう一度求めてくれるものはどれか。
3つ目は、文脈の軸です。
味や機能だけでなく、雰囲気や物語・安心できる言い訳を、きちんとまとわせられているか。
この3つがそろった商品が1本でもあれば、それは会社を支える、不況にも強い柱になるかもしれない、ということを意味するのです。
本能ビジネスを、良心を持ってやる
立ち止まりたい点もあります。
砂糖も塩も脂肪も、摂りすぎれば体に毒です。
本能を刺激して何度も買わせる構造は、突き詰めれば、客の健康を害してでも売る商売と紙一重になりかねません。
ここをどう扱うかで、品格が決まります。
出汁のよく効いた料理が、塩を乱暴にではなく上品に使うように。
本能に効く素材を、品よく、客のことを思いながら扱う店ほど、結局のところ、長く愛されます。
目指すのは、本能だけで客を縛りつけることではなく、”満足と信頼”という、もっと上質な理由で、もう一度選んでもらうこと。
原価の安いものを、誠実な文脈で価値あるものに高め、繰り返し喜ばれる。
その積み重ねが利益を厚くし、資金繰りを安定させ、会社を長く続く存在にしていきます。
人の本能を知ったうえで、それを良心とともに使う。
この一見矛盾した二つを両立できたとき、商売は強く、そして気持ちのよいものになるはず。

