クラウド会計ソフトのマネーフォワードクラウドにもfreeeにも、「自動仕訳ルール」「自動登録ルール」という機能があります。
このルール設定のうち、「後方一致」を使うと効率的に会計帳簿を作成していくことができます。
※本ブログ中の図は、ワンクリックオペレーションの考案者である廣升健生先生の図を許可を得て加筆訂正して使用しています。
クラウド会計ソフトの自動仕訳ルール設定とは
クラウド会計ソフトの代表といわれているマネーフォワードクラウドにもfreeeにも、「自動仕訳ルール」「自動登録ルール」(以下、「自動登録ルール」で表記)という機能があります。
自動登録ルールとは、取引明細(例えば、ネットバンキングの明細、クレジットカードの明細、レシートのExcel明細)のなかの「①日付」・「②金額」・「③取引内容」を取り込んだあと、それに加えて、帳簿に登録していく際に必要となるもうひとつの要素である「④勘定科目」を選択する際、その選択を効率的に行うための機能です。
自動登録ルールを設定しなくとも、会計ソフト側で”予測変換”して候補を提案してくれるのですが、それを”予測変換”ではなく、取引明細にある特に「③取引内容」のなかのパターン化された特定の文言と個別に紐付け設定することにより、「④勘定科目」の選択の際の精度を上げるというものです。
例えば、事業用クレジットカード明細を取り込み、「①日付:10/28」・「②金額:300」・「③取引内容:ETC」とあるとして、そのなかの「ETC」という文言に、自動登録ルール設定により、「④勘定科目:旅費交通費」を紐付けをしておきます。
そうすることにより、明細を取り込んだあとの登録処理のとき、「④勘定科目」へ自動的に「旅費交通費」という選択肢を出るため、あとは確認して登録処理するだけで帳簿作成を進めていくことができます。
(freeeでは、設定で、登録処理すら省略することも可能。)
この自動登録ルールを整備することが、帳簿作成をスムーズに効率的に進めていけるかどうかのポイントになります。
自動仕訳ルールの実際の画面(マネーフォワードクラウド)
TOP画面の「未仕訳」などをクリックして、仕訳登録する画面の右上に「自動仕訳ルール」があります。
例えば、このルールでは、明細のなかに「佐川急便」とあれば、「通信費」に紐づくよう設定してあります。
自動登録ルールの実際の画面(freee)
TOP画面の「自動で経理を登録しよう」をクリック(設定からも行けます。)して、自動で経理の画面の右上に「自動登録ルール」があります。
例えば、このルールでは、明細のなかに「ETC」とあれば、「旅費交通費」に紐づくよう設定してあります。
freeeの場合、さらに「取引を登録する」にすると、登録処理を省略することができます。
「後方一致」を使う
自動登録ルールのパターン
この自動登録ルールには、様々な紐付けの形があります。
- 完全一致 → 明細の文言と完全に一致した場合に、適用
- 前方一致 → 明細の文言の前方と一致した場合に、適用
- 後方一致 → 明細の文言の後方と一致した場合に、適用
- 部分一致 → 明細の文言の部分と一致した場合に、適用
- (指定なし)※freeeのみ
「完全一致」は、ルールの活用として効果が限定的です。
一方、「部分一致」「前方一致」も、活用の範囲が広がります。
例えば、「スイドウ 9ガツブン」という明細があるとして、完全一致では、次月に「スイドウ 10ガツブン」という明細を取り込んだとしても、ルールが適用されません。
一方、部分一致や前方一致として設定しておけば、”スイドウ”に対して適用されるため、次月に処理する際、自動的に「水道光熱費」という勘定科目が選択されます。
「後方一致」を使う
「後方一致」を活用して仕訳を一挙に作成していく、という方法も考えられます。
具体的には、Excel取引明細を作成して取り込む場面です。
特に、現金・プライベート資金で支払ったレシート類をExcel取引明細でリスト化して取り込む場合や、クレジットカード明細やネットバンキング明細をcsvで取り込む場合などで効果を発揮します。
さらに、このExcel取引明細作成を業務分担するという選択肢を持つこともできます。
活用例
あらかじめよく出てくる勘定科目リスト(仕訳番号)を作成します。
以下は「よく出てくる勘定科目リスト(仕訳番号)」の例ですが、もっと分かりやすいものに絞ったとしても効果があります。
それを、Excel取引明細を作成する段階で、付してしまうのです。
「&関数」を使えば、Excelの複数のセルを1つのセルにまとめることができます。
クラウド会計ソフト側でこの番号を後方一致でルール設定しておき、明細を取り込むと、勘定科目の紐付けはほぼ終了です
特に現金レシートやクレジットカード明細であれば、勘定科目はほぼパターン化されています。
分からないものや複雑なものは番号を付さず、クラウド会計ソフトに取り込んだ後に考えればよいと思います。
勘定科目を考える場面を2つに分けるメリット
勘定科目を考える場面を2つに分けるメリットは、他にもあります。
Excel明細を作成することは、会計に詳しくなくともできます。
例えば、会計知識のないアルバイトやクラウドワーカーに振ることが可能になるのです。
その段階で、分かるものだけに付してもらう。
クラウド会計ソフトに取り込んだ後は、経験のある方・会計知識のある方が、内容を詳しく見て処理していく。
そのように、業務を分担することが可能になってくるのです。
昨今の人手不足のなかで、業務の分担を工夫する
会計ソフトのなかだけで会計帳簿を作ろうとすると、様々な制約が生まれます。
人材確保のハードルが上がります。
一方、会計ソフトの外側で会計帳簿を作る発想を持つと人材確保のハードルが下がります。
さらにクラウドツールを使えば、「いつでも」「どこでも」「誰でも」が可能となり、昨今の人材不足のなかでも人材を確保することができます。
会計帳簿作成の量的(時間的)要素のほぼすべては”現金・預金”
帳簿作成の量的(時間的)要素のほぼすべては、現金・預金、そしてクレジットカード明細の仕訳登録作業です。
この部分を会計ソフトの外側で作る発想を持ち、さらにそれを他の人に分担してもらう選択肢を持つことにより、自分の時間を多く空けることができます。
この業務分担については、「後方一致」ルールに限らずなのですが、例えば、ご紹介したような「後方一致」ルールの運用によって、自分の業務効率化のみならず、業務分担という選択肢が持て、さらに大きく自分の時間を本業に充てることが可能になります。